ブータンの文化と伝統は、その歴史もさることながら、チベット仏教と密接な関係にあります。
また、照葉樹林地帯特有の風景や米文化、伝統衣装の見た目など、日本と共通する点も多くあるのも興味深いポイントです。
ブータンの民族伝統衣装
ブータンでは、国家のアイデンティティ保護の一環として伝統衣装の着用義務が存在します。
「義務」といっても、常に着用しなければいけないというわけでも無く、仕事が政府または学校関係の場合、王室や政府の公式行事に参加する場合、お寺や宗教施設の訪問時などに限られますが、忠実に守って伝統衣装を着て生活をしている人も多くいます。
男性用民族伝統衣装「ゴ」
「ゴ」は前で重ねあわせ、「ケラ」という帯でしめるためそれだけ聞くと日本の着物に良く似ていますが、足の部分は膝上までたくし上げるのが決定的な違いとなります。
下着には「テュゴ」と呼ばれる長袖の白いシャツを着て、腕の部分はゴとテュゴを一緒に折り返します。足はゴをたくし上げているので一見スカートのようになります。足はそのまま出している人もいますが、基本的にロングソックスを履き、それに靴(革靴やスニーカー、儀礼や行事の際は伝統靴)を合わせるのが一般的です。
また、帯をしめる際に少し上半身部分はたるませることでお腹や背中の部分に空間を作ります。ここをバッグがわりに使うのがブータン人で、持ち歩きするものは大抵ここに入れて、手には何も持たず出歩きます。
最近では帯に携帯をさして、中にiPadなどを入れているハイテクな人もいます。
生地は主に木綿などで、赤や茶色が一般的です。
公式な場所や行事、ゾン、お寺などを訪問する際は、「ゴ」の上に「カムニ」という布をたすき掛けのような形で掛けます。「カムニ」の色は身分・階級によって定められていて、以下のような区分があります。
女性用民族伝統衣装「キラ」
「キラ」はインドのサリーとも共通点のある伝統衣装で、「ティマ」という3枚布を縫い合わせた布地を斜めに巻きつけて着るものです。
「ティマ」は赤や黄色で色鮮かやかな彩りのものが多く、肩口で布を止めるためのブローチ「コマ」は細かい細工の施された銀細工であることが多くあります。
男性と同じくが「テュゴ」がありますが女性の場合これは上に羽織るものにあたり、下には「ケンジャ」というブラウス状のものを着ています。
また、男性の「カムニ」にあたるものとして、「ラチュ」という斜めがけの布を身につけることもあります。
ブータンのスポーツと遊び
ブータンではスポーツや遊びも伝統的なものが多くあります。
ダツェ(弓)
ブータンを旅していると、だだっ広い広場などで男たちが弓を射ているのをよく見かけます。
これはブータンの伝統的弓術で国技でもある「ダツェ」という競技で、国内のほとんどの町や村に競技用の土地があり、定期的に大会も開催されています。
1チーム数人構成の2チーム対抗戦で、100メートル程度離れたお互いの的を狙います。ラウンド制で、1ラウンドにつき1人2回撃ち、的の中央で3点、それ以外は1点というようにカウントしていき、最終的に25点取ったほうのチームの勝ちとなります。
100メートルも的が離れているので、それを撃ちあうのを見るだけでも十分楽しいのですが、それ以上に一度的に当たると大人の男たちが歌い踊るという光景はなんとも微笑ましいものがあります。
1984年のロサンゼルスオリンピックから2008年の北京オリンピックまではブータンから選手が唯一出場した種目が弓術でしたが、2012年のロンドンオリンピックではクンザン・チョーデンが初めて射撃で出場しました。
クレ(ダーツ)
基本的なルールはダツェと同じで、手持ちの羽つきダーツを20メートルほど離れたお互いの的をめがけて投げ合うゲームです。
サッカー
観るスポーツで一番人気はやっぱりサッカー。
ケーブルテレビやインターネットで毎週末イングランド・プレミアリーグや、イタリア・セリエA、スペイン・リーガなどを観ることができ、他のアジア諸国と同じくプレミアリーグの人気が高いのが特徴です。
長らく国内リーグは開催と休止を繰り返していましたが、2012年からブータン国立銀行がスポンサーとなり「ブータン・プレミアリーグ」が開催されていて、プロリーグとしてAFCにも認定されているため上位チームにはAFCカップ(AFCチャンピオンズリーグの下位リーグ)への出場権も与えられます。
2002年に日本と韓国で行われたFIFAワールドカップの決勝の日、ティンプーのチャンリミタン競技場で当時FIFAランキングで202位のブータン代表と203位のモントセラト代表の「世界最下位決定戦」が行われました。このエピソードは映画「アザー・ファイナル」として公開され注目されました。この試合はホームのブータン代表が見事4-0で勝利しています。
また、ブータンサッカー連盟は日本サッカー協会とも深い関係があり、元清水エスパルス監督の行徳浩二氏、サガン鳥栖、コンサドーレ札幌などでプレーした松山博明氏、スペインでもユース年代の指導にあたった小原一典氏、名古屋グランパスコーチやグアム代表監督を歴任した築舘範男氏などがブータン代表監督を歴任しています。
特に築舘監督時代には史上初めてワールドカップ(2018年ロシア大会)アジア1次予選を突破し、2次予選に進出しました。残念ながら2次予選では大敗を繰り返し築舘監督も解任となってしまいましたが、「ブータンのクリスティアーノ・ロナウド」の異名をとるチェンチョ・ギェルツェンなどタレントが徐々に育ちつつあり、今後が楽しみな代表チームでもあります。