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ブータンの宗教について

トンサ・ゾンの壁画

地方や寺院、民族によってドゥク派(カギュ派から分派)、ニンマ派などの違いはありますが、基本的にブータンの国教はチベット仏教と定められています。
チベット仏教は、日本の仏教と同じ「大乗仏教」で、インドで始まった仏教の教えを幅広く取り入れた宗教です。中国や日本に伝わった仏教が初期インド仏教が中心だったのに比べ、中期〜後期と密教についても良く伝わっていて、インドの仏教がほぼ壊滅してしまった後もヒマラヤという地の利を生かしてオリジナルに近い形で残りました。
特に、本家であるチベットが中国に侵略されてしまった現代では、古来の教えを忠実に残す「ブータンのチベット仏教」は極めて貴重な存在ともいえます。

「ブータンの歴史について」でも紹介しているように、ブータンにチベット仏教を持ちこんだのはパドマサンババ(グル・リンポチェ、ニンマ派)で、17世紀にシャブドゥン・ガワン・ナムゲルがドゥク派分裂の際に現在のブータンに移住しこの地を統治したことから、現在ではニンマ派とドゥク派が二大主流となっています。

ブータンの人々と信仰

ブータンの人々は細かな民族や宗派の違いはあれど、基本的に信仰深い人々です。以下で紹介するマニ車やダルシンは国内の至るところで目にすることができますし、熱心にお寺に通う人々にも必ず出会うことでしょう。

マニ車

タクツァン僧院への道すがらのマニ車

マニ車はブータン国内のお寺に必ずといっていいほど設置されている円筒状もので、内部には経文が書かれた神がセットされていて、それを1回回すことによってそのお経を1回読んだこと(徳を積んだこと)になるというある意味便利なもの。大きさは大小さまざまで、お寺以外の宗教関係施設や道路沿いなど様々な場所で目にすることができます。川のある場所では水流でひたすら回り続けるマニ車もあります。
回す方向は、お寺やチョルテンを回る時と同じく時計回りに回します。
ティンプーやパロの土産屋では据え置き用のミニマニ車を売っていて、中を開けるとしっかり経典がセットされています。また、特にお年寄りがお寺の周りなどで手持ちの金属製マニ車を回している姿も良く見かけます。

ダルシン

丘の上に立つダルシン

ブータンの風景の中でヒラヒラと丘の上ではためく無数のダルシンは非常に印象的です。
ダルシンとは高さ5メートルにもなる縦長の布地に細かい字でびっしりと経文が書かれているもので、基本的に数十本がまとまって立てられています。
実は、ダルシンは人が亡くなった時にその遺灰の一部を撒いた場所に108本立てることで供養とするもので、風で経文がはためくたびに祈りが風に乗って、という意味が込められています。現在は環境保全のため1人あたりで使える新しいダルシン用の木は27本までと制限されていますが、その伝統は失われず各地で守られています。
2011年3月の東日本大震災の際、ブータンでは発生翌日に鎮魂のための式典がとり行われ、その際にも各地でダルシンが立てられたという逸話が残っています。

ルンタ

ルンタと呼ばれる祈りの旗

民家の軒先や道路上、峠などいろいろな場所で目にするのがルンタと呼ばれる祈りの旗。小さい旗がロープにくくりつけられ、それぞれに経文や「風の馬(=ルンタ)」が描かれています。色は仏教における五色、すなわち「天・風・火・水・地(=青・白・赤・緑・黄)」を意味しています。

チョルテン(ストゥーパ)

ヨトン・ラの峠の頂上の道の真中に設置されたチョルテン

チョルテンとは直訳すると「仏塔」で、ブータン国内のいたるところに立てられているので必ず何度も目にすることになります。ティンプーの「メモリアルチョルテン」が最大のもので、毎日多くの人が訪れます。基本的に周囲を時計回りに周回することで徳を積むことができるとされています。
ちなみにこのチョルテンはサンスクリット語のでいうところの「ストゥーパ」。この響きでピンと来る方もいると思いますが、「ストゥーパ」は漢訳すると「卒塔婆」となります。日本では卒塔婆というと木の板に梵字が書かれた供養塔を意味しますが、これは日本に仏教が伝来してくるプロセスの中で変化してきたもの。日本語でいう「塔」の語源も「ストゥーパ」の「トゥ」です。

ポー

男根をモチーフとした、ポー

ブータンを旅していると、男根をモチーフとした壁画やオブジェをよく見かけます。宗教上男根がシンボルとなることはヒンドゥー教におけるリンガがシヴァ神のシンボルであったり、日本でも金山神社(神奈川県川崎市)の「かなまら祭り」や田縣神社(愛知県小牧市)の「豊年祭」などを見てもわかるようにそれほど珍しいことではありませんが、ブータンでは想像以上に様々なところで見ることができます。
チベット仏教に大きな影響をもたらした後期仏教では、日本に伝わった前期密教と違い多分に性的な要素を含んでいて、性的なエネルギーを解脱(=苦からの解放)に繋げるという教えが実践されていたとされています。その名残とも言える「男根信仰」は、今では戦いへの力へのシンボルとして、転じて魔除けとして、家などの外壁に描かれたり、簡素化したオブジェを軒先に吊るすなどの光景がみられます。